日本語 6:20 · 全編 English 6:01 · 全編 中文 6:12 · 全編 「数学 × シェーダー」No.00 · リアルタイム描画の短編 · 6:20
Invariant 対称性をめぐる短編
正三角形の六つの対称から「モンスター」まで、七つの章で群論をたどる短編。映像はすべて、コードが一コマずつ計算したもの。ウェブサイトでは、ブラウザの中でリアルタイムに描かれる。
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上映時間 6:20
構成 七つの章と、プロローグ、エピローグ
解像度 再生エリアに合わせて自動調整(最大 440 万画素)
フレームレート 最大でディスプレイのリフレッシュレート(実際は端末の性能による)
録画したコマ なし
言語 English · 日本語 · 中文 章 · 0:00 プロローグ 正三角形を三分の一回転させる。見た目は何も変わらない。 I 0:15 I 対称とは何か 回転が三つ、裏返しが三つ。正三角形の見た目を変えない動かし方は、この六通りしかない。 II 0:49 II 群とは何か 二つの対称を続けて行っても、結果はやはり六つのどれかになる。結果を表にまとめ、回転と裏返しの二組に分けると、表は 2 × 2 に縮む。四つの公理を満たすものを、群という。 III 1:54 III 回すのが先か、裏返すのが先か 回してから裏返すのと、裏返してから回すのとでは、結果が違う。順序を入れ替えても結果が変わらない群は、アーベル群と呼ばれる。三角形の群は、そうではない。 IV 2:18 IV 群のかたち 群を点と矢印で描くと、かたちが現れる。面の種類ごとに、群の規則が一つずつ対応している。後半では、単純群と、一般の五次方程式に解の公式がない理由を見る。 V 3:43 V 平面を埋めつくす 30°・60°・90° の小さな三角形を、三つの辺を鏡にして映し続けると、平面が埋めつくされる。二つの方向にくり返す平面の模様は、対称性で分けると十七種類しかない。 VI 4:21 VI 対称性と保存則 対称には連続的なものもある。時計の文字盤から円へ、そして球へ。エミー・ネーターは、物理法則の連続的な対称性の一つひとつに保存量が対応することを示した。 VII 5:14 VII 対称の原子 有限単純群は、十八の無限系列と二十六の例外に尽きる。例外のうち最大のものが、モンスター群だ。 · 6:04 エピローグ すべてが動くなかで、変わらずに残るもの。 解説 対称は「操作」である この映画は、対称を性質としてではなく、操作として描く。図形を伸ばしも曲げもせずにまるごと動かし、元の輪郭にぴったり重なれば、その操作が対称だ。正三角形には、そういう操作がちょうど六つある。回転が三つ、裏返しが三つ。動かし終えた姿はどれも同じなので、見分ける手がかりは頂点の番号しかない(番号は動きを追うための目印で、図形の一部ではない)。
群の乗積表:どの行にも列にも重複がない 六つの操作から二つを選んで続けて行い、その結果を書き込むと、6 × 6 の表ができる。これがこの群の乗積表だ(群では、続けて行うことを「積」と呼ぶ)。どの操作も元に戻せるので、どの行にもどの列にも、六つの操作がちょうど一回ずつ現れる。こういう表をラテン方陣という。回転を暖色、裏返しを寒色で塗ると、この表は 2 × 2 の表を拡大したものだとわかる。回転と回転、裏返しと裏返しの積はどちらも回転になり、回転と裏返しの積は裏返しになる。三角形の群を三つの回転で「割る」と、元が二つだけの群になる。
ケイリーグラフ:群を点と矢印で描く 群の元一つに点を一つ、生成元一つに一色の矢印を描くと、群にかたちが現れる。四つのものの並べ方 24 通り(4 次対称群 S₄)を、番号が隣り合う二つの入れ替えで生成すると、置換多面体になる。正二十面体の 60 通りの回転を、「1/5 回転」と「半回転」の二つで生成すると、切頂二十面体、つまりサッカーボールの形になる。群の基本の関係式(映画の中でいう「規則」)は面として現れる。五角形はどれも a⁵ = e、六角形はどれも (ab)³ = e だ。生成元を取り替えれば、描かれるかたちも変わる。
万華鏡 第 V 章では、万華鏡のように、画面のすべての画素を一つの小さな三角形の中へ折り返し、何回折り返したかを数える。模様はこの回数の少ない順に、内から外へ広がっていく。この回数は、小さな三角形をその位置まで運ぶ群の元の「長さ」、つまり最少で何回反射すればそこへ届くかだ。線を曲げて、模様が鏡に映した姿と重ならないようにすると、反射は消え、回転と平行移動だけが残る。
ネーターの定理 第 VI 章後半でいう対称は、物理法則の対称だ。厳密には、系の運動方程式のもとになる「作用」という量が、連続的な変換の族のもとで変わらないこと。1918 年、エミー・ネーターは、そうした変換の独立な方向の一つひとつに、運動のあいだ保存される量が対応することを証明した。時間の平行移動にはエネルギー、三方向の空間の平行移動には運動量の三成分、三つの独立な回転には角運動量の三成分が対応する。結晶の周期のように飛び飛びにしかない対称には、この定理は使えない。任意の関数に依存する局所的な対称は第二定理の対象で、運動方程式どうしのあいだに成り立つ恒等式を与える。
有限単純群の分類 有限群はどれも、一段ずつ分解していくと、最後は単純群に行き着く。分子が原子からできているのと同じだ。そして化学と同じく、同じ原子から違う分子ができることもある(C₄ と C₂ × C₂ は、同じ二つの部品からできている)。有限単純群を残らず並べると、十八の無限系列と、二十六の例外(散在型単純群)になる。この一覧に漏れがないことの証明には、およそ五十年と数万ページの論文を要し、2000 年代に完成した。例外のうち最大のものがモンスター群で、その位数(元の個数)は第 VII 章で一桁残らず書き出される。そこには「ムーンシャイン」の始まりとなった発見も出てくる。196883 + 1 = 196884 で、この 196884 は、数論に現れる j 関数の係数の一つでもある。1992 年、リチャード・ボーチャーズは、これが偶然ではないことを証明した。
ナレーション原稿 プロローグ
0:00 一つの正三角形を、中心のまわりに三分の一回転させる。 0:06 頂点はみな動いたのに、三角形は元の輪郭にぴたりと重なる。この作品が描くのは、その変わらなさだ。 I 対称とは何か
0:18 図形を伸ばさず曲げずに動かし、元の輪郭にぴたりと重ねる。その操作を対称という。 0:26 三分の一、三分の二と回せる。一回転は、回さないのと同じ。 0:32 三本の対称軸のどれかで、裏返すこともできる。対称軸は動かない。 0:38 これですべてだ。三つの頂点の並べ方は、六通りしかない。 0:43 回さないのも一つ。どんなにいびつな図形にも、これだけはある。 II 群とは何か
0:51 裏返してから回すと、合わせて一回の裏返しになる。式は右から読む。 0:58 一歩ごとに輪郭に重なるので、どう続けても六つのどれかだ。 1:03 順番も区別し、同じもの同士も入れて、六行六列の表にする。 1:09 どの操作も元に戻せるから、各行各列に六つが一度ずつ並ぶ。 1:15 回転どうし、裏返しどうしは回転に。回転と裏返しは、どちらが先でも裏返しに。 1:22 三つの回転だけで群になる。表は回転と裏返しの二行二列に縮み、この二種類も群をなす。これが群の分解だ。 1:33 e と s も群をなすが、この分け方では色が混ざり、表が縮まない。小さな群があるだけでは分解できない。 1:42 ものの集まりと、その合わせ方。この四つの公理を満たせば群だ。結合法則とは、順番を変えなければ、どこから合わせても同じということ。 III 回すのが先か、裏返すのが先か
1:57 回すのが先か、裏返すのが先か。対称軸は動かない。 2:02 同じ二つの操作なのに、頂点の行き先が違う。別々の裏返しだ。 2:08 どの二つを続けても順序によらない群を、アーベル群という。三角形の群は違うが、分解した二つはどちらもそうだ。 IV 群のかたち
2:21 対称を点で描く。金の矢印で、さらに回す。青い線で、さらに裏返す。 2:28 裏返した側の輪では、金の矢印が逆回り。順番を変えると、行き着く点が変わる。 2:35 三角形の対称は、頂点の並べ方。ものが四つなら二十四通りで、線の両端は入れ替え一回の差。 2:45 重ならない二つの入れ替えは、どちらが先でも同じで、正方形。一つ重なると、六角形。 2:53 正二十面体の回転は六十通り。描けばサッカーボール。青は半回転。 3:00 金の五歩でも、金と青の交互六歩でも元に戻る。面の種類ひとつが、この群の規則ひとつ。 3:08 小さな群を含むのに、三角形のようには分解できない。単純群だ。 3:14 一般の五次方程式の群は、五つの根の百二十通りの並べ方。六十通りの回転は、そのうちの半分だ。 3:23 根号で解けるなら、群は順序によらない群に分解できる。この部分は分解できず、順序も効くので、一般の公式はない。 3:33 公式がないと証明したのはアーベル。その理由を見抜いたのは、十九歳のガロアだ。翌年、決闘で命を落とす。 V 平面を埋めつくす
3:46 三十度の角をもつ直角三角形を、辺を鏡にして映していく。この角度だから重ならない。 3:54 模様の対称は無限の群。どれも、三角形を別々の一枚へ運ぶ。 4:01 模様を曲げると鏡像と重ならず、残るのは回転と平行移動だけ、別の群だ。 4:08 二つの方向にくり返す模様は、何を描いても、対称で分ければ十七種類。 4:14 三次元では二百三十種類。周期的な結晶は、必ずそのどれかに属する。 VI 対称性と保存則
4:24 針を何目盛りか回す十二通りも群をなす。一周回せば、回さないのと同じ。 4:31 刻みを細かくし、どんな角度も許して初めて、対称は連続的になる。 4:37 球の回転も群をなす。中心を通るどの軸のまわりでも、どんな角度でも。 4:44 物理法則にも対称がある。時や場所や向きを変えても、実験は同じように進む。 4:51 エミー・ネーターは示した。法則の連続的な対称の種類ごとに、保存量があると。 4:58 実験全体をどの軸で回しても同じだから、全角運動量が保存される。 5:03 実験をいつ始めても同じだから、全エネルギーが保存される。 5:08 実験全体をどこへ動かしても同じだから、全運動量が保存される。 VII 対称の原子
5:17 有限群は一段ずつ、単純群という原子に分解できる。同じ原子から、違う分子もできる。 5:25 この周期表に漏れがないことを、およそ百人の数学者が、半世紀かけて証明した。 5:31 十八の無限系列と、二十六の例外。 5:35 最大の例外、モンスター群は、これだけの対称からなる。 5:40 回転として表すには、少なくとも 196883 次元が要る。 5:47 これに一を足すと、数論の j 関数の係数になる。次の係数も、こうした次元の和だ。 5:54 この一見突飛なつながりは、「ムーンシャイン」と呼ばれた。1992 年にボーチャーズが、偶然ではないと証明した。 エピローグ
6:06 何かを変えずに保つ操作をすべて集める。どれも元に戻せるなら、続けて行うことで、それは群になる。逆にどの群も、何かの対称を、すべて集めたものだ。